4-4 ほとゝぎす鳴(く)やうす雲濃紫(こむらさき)
【解説】 初夏五月に南方から渡ってきて日本に夏を告げる鳥。雪月花に並ぶ夏の美目でもある。昔は初音を待ちわびた。初音を待つのは鶯と時鳥だけ。夜、密かに鳴くときは忍び音といった。
【来歴】 『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
暁に名告り鳴くなるほととぎすいやめづらしく思ほゆるかも 大伴家持『万葉集』
信濃なる 須賀の荒野に時鳥鳴く声聞けば 時過ぎにけり 作者不詳『万葉集』
いくばくの 田をつくればかほととぎすしでの田をさを朝な朝な呼ぶ 藤原敏行『古今集』
ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな よみ人しらず『古今集』
ほととぎすそのかみ山の旅枕ほのかたらひし空ぞわすれぬ 式子内親王『新古今集』
【実証的見解】
時鳥は、カッコウ目カッコウ科に分類される鳥で、夏鳥として九州以北に飛来する。全体的に灰色で、腹部に白と黒の横縞模様が見られる。托卵の習性があり、おもに鶯の巣に卵を産む。食性は肉食性で、毛虫などを好んで食べる。キョッキョッキョキョなどと鳴き、「特許許可局」や「テッペンカケタカ」などと聞きなしされる。
【例句】
野を横に馬引むけよほとゝぎす 芭蕉「猿蓑」
ほとゝぎす消行方や島一ツ 芭蕉「笈の小文」
京にても京なつかしやほとゝぎす 芭蕉「芭蕉書簡」
ほとゝぎす大竹藪をもる月夜 芭蕉「嵯峨日記」
ほとゝぎすきのふ一聲けふ三聲 去来「去来発句集」
時鳥啼や湖水のさゝ濁り 丈草「丈草発句集」
弓取は弓持てきくほとゝぎす 白雄「白雄句集」
おもひもの人にくれし夜杜鵑 太祇「五車反古」
山吹も散らで貴布祢の子規 維駒「五車反古」
岩倉の狂女恋せよほとゝぎす 蕪村「五車反古」
江戸入りの一ばん声やほととぎす 一茶「七番日記」
葛飾北斎筆「子規 杜鵑花(ほととぎす・さつき)」(江戸時代/19世紀/中判/錦絵/東京国立博物館蔵)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/482420
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