水曜日, 2月 01, 2023

第四 椎の木かげ(4-7)

 4-7 山陵(みささぎ)の吸筒さがす夕(ゆうべ)かな(初案の「詠み」と「句意」)

   山陵(やまがら)の吸筒さがす夕(ゆうべ)かな(再案の「詠み」と「句意」)

(再案の「詠み」と「句意」)

  この句は、其角の「山陵(カラ)の壱歩をまはす師走哉 (『いつを昔』)」の句を踏まえての一句と解するのが妥当のようである。

 句意=「山雀(やまがら・三夏)」が「山陵(みささぎ)」で「夕べ」の「吸筒(水筒・水飲み場)を探している。其角の句を踏まえると、「山雀利口」(座頭市から高利の借金をして当座の遣り繰りをする者)が「三両(山陵)一歩」の「高利貸し」に、この「夕べ」の「吸筒(食い扶持))」に四苦八苦している。

 http://yahantei.blogspot.com/2007/03/blog-post_24.html

 (謎解き・五十)

 ○ 山陵(カラ)の壱歩をまはす師走哉 (其角『いつを昔』)

 「とにかくにもてあつかふはこゝろなりけり 光俊」の前書きがある。「山がらの廻すくるみのとにかくにもてあつかふはこゝろなりけり」(『夫木和歌抄』巻二十七・光俊朝臣)を踏まえている。訓読みの「やまがら(山雀))」と音読みの「さんりょう(三両)」を掛けている。これは当時の「三両一歩」の「座頭金」(高利)を風刺した句である。座頭金は幕府が盲人の保護政策として高利貸しの営業を認め、後に高利の代名詞に「三両一歩」の語が生じたことによる(今泉・前掲書)。また、「山雀利口」(小利口で実際の役に立たないもの)で、師走の遣り繰りに困って、利子を一歩(一歩は一両の四分の一)を先払いして、二両三歩を手にしたが、山雀小利口で、前書きの光俊の歌にあるように「もてあつかふ」(始末に困る)ということになるというのである(今泉・前掲書)。表面的な句意は、「山稜鳥の異名を持つ山雀は胡桃をころころ廻してもてあそぶ習性があるが、その足の一歩でこの師走の忙しい時に、胡桃をもてあそんでいる」。そして、その背後の意味は、「その山雀と同じように、山雀小利口で、師走の資金繰りに困って、山陵鳥ならず、三両を一歩の利子という高利で座頭金を借りて、利子を前払いして、当座の遣り繰りをころころと胡桃のように廻しているが、とどのつまりは、そんな遣り繰りはうまくいかず、仕舞いには、どうにも始末が困ってしまうことになる」というようなことである。これは、其角の「聞えがたき」(意味が分からない)句の、いわゆる「謎句」の範疇に入る句の一つであろう。この種の謎句は、「洒落風」ともいわれ、「一般に芭蕉没後、とくに顕著になる其角独特の作風をさし、武士口調のもじり、世相の風刺などにその一例が見られる」(今泉・前掲書)ところのものであろう。この種の其角の世相風刺などのの句として、前にもその幾つかは紹介したが、次のようなものがある。】

https://paradjanov.biz/art/favorite_art/favorites_j/4473/

Title:百千鳥 「山雀 紀定丸 鶯 則有遊」 Penduline Tit (Yamagara) and Bush Warbler (Uguisu), from the album Momo chidori kyôka awase (Myriad Birds: A Kyôka Competition)

Artist:喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro

Dates1790年頃

山雀 君は床をもぬけのくるみわればかり ちからおとしの恋の山がら

鶯 のきちかくほほうとつくる一声は 我恋中をみたかうぐいす

 

(初案の「詠み」と「句意」) 

 季語=山陵(みささぎ)=鵲(かささぎ)三秋(「鵲」の「捩り」詠み)

https://kigosai.sub.jp/001/archives/2233

 【子季語】 高麗鴉、朝鮮鴉、唐鴉、筑後鴉、肥前鴉、烏鵲、勝鴉

【関連季語】 鵲の橋、鵲の巣

【解説】 七夕伝説に登場する鳥。天の川を渡る織姫のために羽を連ねて橋を作るという。カラスに似ているが腹部が白いのでカラスと見分けられる。

【文学での言及】 

かささぎの渡せる橋におく霜の白きをみれば夜ぞふけにける 大伴家持『新古今集』

【実証的見解】 鵲は、スズメ目カラス科の鳥で、日本ではおもに北九州地方に生息する。体長約四十センチで、全体的に黒く、肩や羽、腹部の一部が白い。穀類や木の実などを食べるほか、秋にはイナゴなどの害虫も食べることから、益鳥とされる。十二月ころから三月ころまでが繁殖期で、枝や竹、ハンガーなどを用いて高い木の梢や電柱の上に巣を作る。産卵数は五個から八個くらいで、四月ころから巣立ちを始める。

【例句】

かささぎや石を重りの橋も有り 其角「浮世の北」

 ※山陵(みささぎ)=「山陵(さんりょう)」=「君主の墓。帝王の墓。天皇・皇后などの墓。みささぎ。御陵」(「精選版 日本国語大辞典」)が本意であるが、その「みささぎ」の詠みから「かささぎ(鵲)」を「捩り(もじり=表現を変えて滑稽化している)詠み」していると解する。

 ※吸筒(すいづつ)=酒や水などを入れて持ち歩いた、竹筒または筒型の容器。水筒。

※俳諧・鷹筑波(1638)二「さとりて見ればからき世の中 すひ筒に酒入てをくぜん坊主〈時之〉」(「精選版 日本国語大辞典」)

  句意は、「鵲(かささぎ)が、山陵(みささぎ)の近辺で、夕べの吸筒(水を飲む所)を探している。その図は、『かささぎ』ならず「みささぎ」の名が相応しい。」

 

渡辺省亭『花鳥画帖(迎賓館赤坂離宮七宝下絵)』より「鵲図」東京国立博物館蔵

http://bluediary2.jugem.jp/?eid=4614 

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